California City, California
本作《California City, California》は、社会学者からのちに不動産デベロッパーへと転身したネーザン・メンデルゾーンが1958年に発表した、モハーベ砂漠をカリフォルニア・シティーという巨大都市へと転換する構想を追ったものです。カリフォルニア・シティーは、第二次世界大戦に急激に増加する人口と経済発展の受け皿となるべく、カリフォルニア州の新たな大都市を目指し計画されました。たとえ過酷な砂漠の真ん中であっても、豊かな近代的生活を送るために必要不可欠なものを構築しうる自由さとパワーを、人類は持しているのだという信念に基づいた計画でもありました。メンデルゾーンと共同経営者たちは、30万平方メートルにも及ぶ土地を丁寧にデザインし、占有面積でいえば州で三番目となる大都市を実現させるべく都市設計を実行しました。初期段階の広報素材には「水」モチーフが繰り返し使用され、将来的には水に満ちた理想的な都市が実現することが大々的に謳われました。現在のカリフォルニア・シティーは、当初思い描かれデベロッパーが広く大衆へと訴求した理想的な姿からは、程遠い様相を呈しています。広大な土地に縦横無尽なネットワークのように張り巡らされた道路の合間にありながらも、今尚ほぼ無人であり続けるカリフォルニア・シティー。空撮で記録されたそれらの写真は、広大な砂漠に理想都市を築き上げるというメンデルゾーンのビジョンが、環境に対し持続可能なモデルとしてあり得たのかを問いかけます。街を形成するための基盤を備えたこの場所に、将来的に街形成が実現される兆しが見出されることは、果たしてこの先あるのでしょうか。
写真家について
ミナミ・ノリタカ
1981年大阪生まれ、シカゴ在住。カリフォルニア大学バークレー校卒業、カリフォルニア大学院アーバイン校・修士課程修了、現シカゴ・ロヨラ大学准教授。ハーバード大学、ウェルズリー大学、ボストン美術学院、カリフォルニア大学バークレー校、カリフォルニア大学アーバイン校などでも非常勤講師として写真学を担当した。グラハム財団、ポロック・クラズナー財団、ダフィー財団から助成金を得て積極的に作品制作を続ける。主な個展にグリフィン写真美術館(アメリカ・マサチューセッツ)、UCLA建築都市デザインギャラリー(アメリカ・カリフォルニア)等。主なグループ展にアパチャー(アメリカ・ニューヨーク)、フォトバーゼル(スイス・バーゼル)、ニューワイトギャラリー(アメリカ・ロサンゼルス)等。写真集『1972: Nakagin Capsule Tower』をKEHRER(ケーラー)社より2015年に刊行。サンフランシスコ近代美術館、カリフォルニア大学ロサンゼルス校建築・都市デザイン学科、シカゴ現代写真美術館などに作品収蔵されている。
ウェブサイト: noritakaminami.com