Futuristic Archaeology
遊牧民の生活は、歴史を通して、伝統的なモンゴル文化の中心でした。都市化の傾向はあるものの、モンゴル人のおよそ35%が依然として遊牧民として暮らしており、彼らの生活はその広大な土地に大きく依存しています。
近年、彼らが暮らしている土地に深刻な変化が起こっており、この伝統的な暮らしが脅かされています。モンゴル政府の調査によると、およそ850の湖と2000の川や支流が枯れたと言われています。これによりモンゴルの約25%が過去30年間に砂漠化しました。また潜在的に75%の土地が砂漠化の危険にさらされています。これらの環境変化は、何千年も世代から世代に伝えられてきたモンゴルの遊牧民の生活様式を直接脅かすものです。
このプロジェクトは、モンゴルでまさに砂漠化が起こった実際の場所に赴き、そこに住む人々と彼らの家畜と一緒に、博物館のジオラマを再現することを試みた作品です。それは、遊牧民という伝統的な暮らしが、将来、博物館のジオラマの中でしか見れないものになってしまうという想像から生まれたものです。
作品は、ビルボード上に印刷されたイメージを、実際の景観や水平線と共に配置することによって出来上がっています。
私はこの作品を通じて、遊牧民の生活が、今まさに現実と仮想空間である博物館のはざまに存在している、という感覚を見る人に生み出すことを望んでいます。
モンゴルの伝統的な遊牧民の生活様式は、将来、博物館にのみ存在するものになるかもしれません。
写真家について
テソン・リーは、フランスのパリを拠点に活動する韓国人写真家。2003年韓国のチュンアン大学で学位を取得後、商業写真家としてキャリアをスタート。その後、社会問題をテーマとした写真制作へと転向。グローバリゼーションが私たちの社会や自然に影響を与えているかをテーマとしたプロジェクトを生み出している。
自身のヴィジョンやメッセージを伝えるために、コンセプチュアルなアプローチの作品を制作している。
彼の作品は、CNN、ル・モンド、ニューヨーカー、ワシントンポスト等の国際的なメディア等で掲載されている他、ソニーワールドフォトグラフィーアワード(ロンドン、2013年/2015年)や、Voies-Offプライズ(アルル、2016年)など様々な賞を受賞している。
ウェブサイト: www.daesunglee.com